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    • 我が国の歯学教育の改革 

      ー歯学から口腔医学へー

       

       

       

       

    • 作家の遠藤周作氏が1987年から95年にかけて、産經新聞に連載した「花時計」の中に、「なぜ歯学だけが別扱いなの?」という一文がある。
      彼は、耳鼻科や眼科は医学部に属しているのに歯科だけがなぜ別扱いにされるのかという疑問を投げかけている。この素朴な疑問は、一般の人や医療関係者の中にも広く存在している。
      更に遠藤氏は、歯科医学は医学全般と元々一体であるべきものであり、最終的には、医学全般の一専門分野として「口腔医学」として位置づける事が、社会のニーズに対応し、国民の健康増進に一層寄与する事になると主張している。

      学校法人福岡歯科学園の理事長田中健藏先生は、医学・歯学教育体制の再考を訴え続けている。
      すなわち、日本では様々な社会や歴史の流れで、二元的な発展をしてきた医学と歯学ではあるが、高齢社会、口腔と全身の密接な関連など新たな社会の流れにあって、歯科医学は今一度原点に立ち返り、口腔医学として医学的基盤に立った学問体系を確立し、医学との関係を一元的に整理する必要があるとして、福岡歯科大学の機構改革に着手しているのみならず、学会、行政に対して積極的にアプローチしている。

    • 一部書き出しのみ掲載します

       

       

      現在、我が国には国公私立を併せて29の歯学部があり、歯科医師の養成教育を行っている。この教育を歯学教育と呼び、時には歯科医学教育と呼んでいる。私たちは、この「歯学」と「歯科医学」の持つ違いを感じないで、これまで両者を同義的に解釈してきた。

       

      アメリカにおいても1940年にハーバード大学が「Dentistry」から「Dental Medicine」に名称変更され、はや70有余年が経過したが、「Dentistry」教育と「Dental Medicine」教育は同じであると断言する教員が多い。ハーバード大学は名称変更の理由として、「現在のハーバード大学の主たる強みである口腔における医学の生物学的基盤をよりしっかり強調し、歯学研究の学際的研究を組織するために、Harvard School of Dental Medicineとして再編する」と述べられている。

      また、特徴的な教育プログラムとして、医学部学生と一緒に学ぶクラスを編成して基礎医学教育や病態生理教育を行う2年間の教育を行い、大学教育病院の病棟や地域ヘルスセンターで医科臨床の初期教育を実施すると述べている。この改称の理由を考えると、「Dentistry」と「Dental Medicine」の理念と実際の教育プログラムは、少なくてもハーバード大学では異なっていたと考えるべきであり、上に述べた特徴的なプログラムの実施をもって、ハーバード大学は「歯学部」から「歯科医学部」に代わったと言えるのではないだろうか。問題は、その後に改称した大学の中には、カリキュラムが名称変更に合致しないことも多々あったと思われるし、最近の「口腔内科」という考えの強まりを例として挙げるまでもなく、名称は変えずに教育内容を変更した有為な歯学部もあったと考えられる。


      特に日本では、「School of Dentistry」も「School of Dental Medicine」も「歯学部」と訳され、区別されなくなってしまった事も、両者は同じだという誤解を広く生じさせたかも知れない。

      1883年、太政官布告により「医師免許規則」と「医師開業試験規則」が公布されたが、「歯科」と「医科」の一分野である一般外科は「稍異なる」とされ、別に「歯科医術開業試験規則」が定められた。その事が「歯科」と「医科」を区別する歴史的な分岐点になった。一方で、平成4年の医療法の改正で、「医療は、…医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、…単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質且つ適切なものでなければならない」と述べられ、「歯科」と「医科」の相違が解消されつつある。


      「歯科」と「医科」が「稍異なる」時代から、同質のものになりつつある今、「歯学」教育と「医学」教育の質的相違についても再考する必要があるのではないだろうか。今、必要とされるには「医学」の一分野としての「歯学」であり、「医学」としての「歯学」である。歯科医院・歯科病院を訪れる患者は、歯だけの治療を期待している訳ではなく、口腔の治療を通して、より健康である事を期待しているのだ。そうした期待に応えるためには、歯科医師は口腔疾患の専門医として機能することが求められ、そのためには、まず、一般医学教育に基づいて教育が行われ、その後に口腔に関する専門的な教育行われる必要がある。

      医療は医師中心のものではなく、患者中心のものであり、その制度確立は社会の大きなニーズである。本稿では「歯学」が「医学」の一分野として機能するために、今何を為すべきかという観点から、本学が提唱する「口腔医学」について概説したい。

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